近年、歯科衛生士による局所麻酔の施行についての記事をよく見かけます。
歯科医師法や歯科衛生士法、厚生労働省の過去の通達などにより、ある一定の条件を満たすことで、歯科診療の補助としての麻酔を歯科衛生士の手で行うことが可能となるそうです。
また、認定制度を設けた学会も存在しています。
(あくまで講習会を受講し認定試験に合格したことを示すものであり、麻酔の許可を与えるものではない)
これに対し、日本歯科麻酔学会と日本歯周病学会は、「歯科衛生士による局所麻酔行為に対する見解」を発表しています。
見解では、浸潤麻酔は概ね安全に行われている方法であると言及した上で、局所麻酔薬の成分に血管収縮薬を含むものがあるため全身的な偶発症を発現する可能性があり、その場合は全身管理や救急処置について十分な知識と技術を修得した歯科医師が適切に対応する必要があると明言しています。
現状では、歯科衛生士を養成する教育機関において浸潤麻酔を教えている教育機関はごく一部であることや、浸潤麻酔を歯科衛生士の業務と考えているものはわずかであったとの報告などを踏まえると、浸潤麻酔全般を現時点で歯科衛生士の業務とすることは困難であると考える旨を示しています。
また、浸潤麻酔行為を含む歯科治療に積極的に関わろうとする歯科衛生士の活動は支援するべきものとした上で、全身管理の知識を含めた局所麻酔に関する知識・技術は数日の講習会で得られるものではなく、歯科衛生士の卒前・卒後教育体制を整備して対応する必要があるとしています。
現時点では卒前教育からの見直しが必要としていますが、今後は学会のバックアップの下、歯科衛生士の活躍の範囲が広がることを願っています。
文責:かわまがりファミリー歯科 大嶋