9月28日、2017年に福岡の歯科医院で虫歯治療後に2歳の女児が死亡した事故について元院長が在宅起訴されたというニュースが流れました。

この事故は、歯科治療後に体調が急変した患児の状態を十分に確認せず、救命措置を怠り、急性リドカイン中毒による低酸素脳症で女児が亡くなったというものです。

 歯科医院では日常的に局所麻酔を使用しています。局所麻酔自体は治療に伴う痛みを和らげ、快適な環境を提供してくれる素晴らしいものです。

しかし、薬物である以上、その作用や副作用についての知識を持ち、適切な対応を行えるよう備えるのは当然ですし、自身の技量以上の処置が必要であると判断した場合は、救急搬送などの措置を講じることが必要です。

 さて、今回のニュースを見ている中で、世の中に局所麻酔についての誤解が多いことを改めて感じました。

一番違和感を覚えたのは、「この年齢(2歳)で麻酔をして歯科治療をするのか」というものです。

よくよく内容を見てみると、局所麻酔と全身麻酔について混同しているものが数多く見受けられました。

一般の歯科医院で全身麻酔をすることはほとんどありません。

しかし、低年齢なので歯科治療ができない、虫歯がたくさんあって子供への治療の負担が大きい、といった場合には全身麻酔で歯の治療をすることがあります。

「この年齢だからこそ、麻酔をして歯科治療をする」のです。

また、状況にもよりますが、局所麻酔を用いない治療は拷問のようなものです。

全身麻酔での治療の時でも、本人は寝ていても体は痛みを感じるので局所麻酔を使用します。今回の事故の主治医の対応を擁護するわけでは全くありませんが、“麻酔の使用=悪”という世間のイメージができてしまっていることが心配です。

 テレビのコメンテーターの中には、小児歯科での局所麻酔やラバーダムの使用を否定する人もいたようです。

歯科治療を行う側からすると、それこそ子供にとって害でしかないのですが・・・。

テレビや世間の意見を鵜呑みにするのではなく、正しい情報を得る重要性を感じました。

文責:大嶋