皆さまの中には、現在口腔内の問題をお持ちの方で、どこの歯科医院を受診しようか検討中の方もおられると思います。
歯科医院のHPを見ると『 当院は、抜かない・削らない歯科治療を実践しています! 』というようなフレーズを見かけることもあろうかと思います。
患者側である皆さまにとって、歯科医療における治療介入は多少なりとも『 苦痛 』をイメージさせるものです。
従って、治療の介入が最小限であることは、皆さま共通の望みであろうかと思います。
このようなことを背景に、『 抜かない・削らない 』という情報配信は、患者側の皆さまにとって大変魅力的に感じられるものです。
かつてはこのような情報配信をするだけで、 いとも簡単に飛びついてしまう方がいらっしゃいました。
しかしながら、最近では『 情報弱者 』という概念が浸透してきました。
この概念が浸透してきたことによって、多くの方が『 抜かない・削らない 』というような情報配信があっても、そのメリットだけを簡単には鵜呑みにせず、『 隠されたデメリットはないのか 』ということを確認して、総合的に判断するようになってきています。
同じ結果が得られるのであれば『 抜かない・削らない 』方がいいのは当然です。
皆さまが従事しておられる業界おいて、何らデメリット(代償)なしに良好な結果を得るという事は ほとんど無いと思います。
歯科医療においても同様で、皆様に目先の利益ではなく 総合的・長期的視野に立った利益を与えていくために、処置介入を行う際には多少なりとも『 歯を抜く・削る 』という行為が必要になります。
もし 歯科医療側が、HP等で あなたの口腔内を診断する前から『 抜かない・削らない 』というのであれば、その歯科医院は
『 抜かない 』が、実は ” 放置 ” であったり、『 削らない 』は、充填する材料 や 削らなかった部分 の強度を全く無視していたりと、『 後先の事を全く考えていない施術 』であることがほとんどです。
具体的にお伝えすると
・咬合(こうごう:噛み合わせのこと)を原因とする問題に、全く対応できない歯科医院
・重度の歯周病治療に全く対応できない歯科医院
・口腔内全体を見渡さずに、1本単位の歯科治療しか行っていない(木を見て森を見ずの臨床)
・事実と異なる 都合の良い事しか言わない歯科医院(実は、抜きもすれば 削ってもいる)
これらのうち最低1つ当てはまっています。
『 抜かない・削らない 』の前に『 できるだけ 』とか『 なるべく 』を付けても同じです。
プロ目線で見れば、『 なるべく抜かない・削らない 』は『 道端に落ちているゴミを拾って食べない 』のと同じくらい『 説明不要のあたり前の事 』だからです。
では、『 本当に技術力のある歯科医院は、どのように表現するのか? 』という事になろうかと思います。
本当に技術力のある歯科医院では、『 抜かない・削らない 』とはいわずに『 歯を抜かずに残す 』と表現します。
『 歯を残す 』という表現は、患者側である皆さまにとっては 馴染みのない表現かと思いますが、歯科医療側にとっては日常的に使用する用語です。
歯科医療のプロ同士においては、歯科医師が『 歯を残す 』と言うからには、歯を抜かずに残したという臨床実績を、いつでも いくらでも症例提示できる事が要求されます。
患者側の皆さまには大変以外に感じるかと思いますが、多くの歯科医院では『 歯を抜かずに残す 』という臨床実績をほとんど持っていないのが現状です。
そのため、『 歯を抜かずに残す 』という表現が できないかわりに『 抜かない・削らない 』と表現しているのです。
ご自身の大切な歯を『 抜かずに残してほしい 』皆様におかれましては、『 抜かない・削らない 』と表現する歯科医院は、プロ目線で見れば『実は明らかに技術力が低い 』という明確な判断基準となりえる事を、ご認識して頂くとよろしいかと思います。
文責:万代歯科診療所 笛木 貴