新型コロナウイルス感染症の影響があり、感染予防への関心が高まっています。
消毒用アルコールの不足やマスクの不足が続いていることからも(無意味な買い占めもありますが)、関心の高さをうかがうことができます。
今回は世界的な流行ということもあり大きく取り上げられていますが、私たちの周りには普段から細菌やウイルスが溢れています。
これらの中には病原性の低いものから高いものまで様々な種類が存在します。
歯科で身近なむし歯や歯周病も細菌感染から生じるもので、日々感染との攻防を行っています。
歯科領域では口の中での治療を行うため、唾液の飛沫や血液への暴露が日常的に生じています。
細菌やウイルス性の疾患がある患者さんもいますが、全員が自分の疾患を把握しているわけではありません。
そのため、スタンダードプレコーション(標準感染予防策)という考え方が浸透しています。
これは、原微生物の感染源確認の有無にかかわらず、すべての患者さんを感染者と捉え、血液、全ての体液、汗を除く分泌物、排泄物、傷のある皮膚、そして粘膜が感染原因になりうる、というものです。
これに則っている歯科医院は、普段から感染予防対策を行っているため、細菌やウイルス性の疾患のある患者さんもそうでない患者さんも同様に治療を行うことができます。
具体的には、①頻回の手指衛生 ②個人防護衣(マスクや手袋)の着用 ③歯科医療器材の洗浄・消毒・滅菌 が挙げられます。
また、歯科治療中に術者や助手が触れるエリアの清掃やフィルムの貼付を患者さん毎に行うことで、診療環境の衛生にも配慮しています。
これにより「患者さん⇔医療従事者」はもちろん「患者さん⇔患者さん」の感染を予防しています。
今ではスタンダードプレコーションは当たり前のことですが、平成26年に歯科医院において切削器具(エアタービン、電気エンジン)を滅菌せずに使用していると新聞報道がなされ、世間を賑わせました。
この報道は普段から感染対策に力を入れている歯科医院にとってはあり得ない出来事でした。
今回の新型コロナウイルス感染症の騒動は、院内感染について改めて考える機会となりました。
文責:大嶋