今月のコラムは睡眠中に口の中に起こっている現象を取り上げたいと思います。

わたしたち歯科医師と患者さんとの間には、「生涯自分の歯で快適に過ごしたい/過ごしていただきたい」という共通の思いが存在していると思います。

歯の寿命を長くできるように、一生懸命治療やメインテナンスに通ったり、セルフケアをがんばったりしていると思いますが、起きている日中の時間以上に睡眠中には歯の寿命を脅かすような要素が隠れていたりもします。無意識の時間に起こることなので自分自身でそれらを把握することはなかなか難しいですが、場合によっては日中よりも睡眠時に何倍もの多くの問題を抱えている人もいます。

夜間に起こるリスクの一つは、ブラキシズムと呼ばれる習癖です。昼夜を問わず起こるものですが、夜間のブラキシズムの方がより悪影響が強いと言われています。かみしめたり、食いしばったり、ギリギリと横に動かしたり、色々なパターンがあるようですが、そのブラキシズムによって歯が割れる、すり減る、欠ける、揺れが増すなどのマイナスな影響が起こります。歯の寿命に大打撃を与えることも多くあります。

その他には、睡眠中に唾液量が少なくなり虫歯のリスクが高くなることも知られています。夜の寝る前の歯磨きがいちばん重要なのも、就寝直前の糖分の摂取を避けたほうがよいのも、このことと関係があります。

また、歯の寿命とは少し離れる問題かもしれませんが、睡眠時無呼吸症候群には、かみ合わせ、骨格、歯並びなどが少なからず影響を与えると言われています。こちらは生命予後に関わるような病気であり、治療には歯科的なアプローチを取り入れるケースもあります。

以上のように、夜間には日中以上に歯の寿命を脅かすような要素がある場合が存在します。もし、それらの兆候に気づいたら、あるいは心配があれば、かかりつけの歯科医院に相談してみてもよいかもしれません。そして夜間に起こる問題の解決はなかなか難しいので、日中にできることをがんばっておくことが大切かもしれません。

KDRI 北関東歯科臨床研究会 塩澤